『ターニング・ポイント1 ファイヤーストーム 神秘の光』デイヴィッド・クラス
主人公は、ジャック・ダニエルスン。金髪・青い目・高身長・フットボール選手・恋人アリと、いかにも「アメリカの高校生」といったキャラクターである。
ところがデートの夜、不気味な男と目が合ったことからジャックの人生は一変する。その話を聞いた父さんは急いでジャックを車に乗せ、時速100キロ以上のスピードでハイウェイを疾走。そんな彼らに追っ手が迫る。父さんは言う。「やつらは、ここで食い止める。お前は希望の光なんだ。逃げろ!」それでもジャックがためらっていると、父さんは自分の足を銃で撃ち、続けて告げる。「次は頭をふっ飛ばす。みたいか?いやなら逃げろ」
これがほんの数ページの出来事。この日を皮切りに、ジャックは逃げる、逃げる、逃げる。感傷に浸る余裕もなく、とにかく逃げる。
疾走感溢れるファンタジーである。最初からエンジン全開のフルスピードに、振り落とされないようにするのがやっと。しかもこの勢いは一向に衰えることなく、ラストまで続くのだからすごい。息つく暇のない怒涛の展開の連続の中でオアシスになっているのが、ジャックと道中をともにする犬のギスコや美少女・イコの個性豊かな面々だ。肝心のファイヤーストームの出番はあっけないものの、緩急自在に使い分けた筆の運びに、ぐいぐい引き込まれていく。
ただそれも、地球環境という重石があればこそ。執拗に命をつけ狙う者と逃げるジャックとの攻防戦の根底には、深刻な環境問題が横たわっている。全篇アクションで彩られつつも、そのじつ、現代世界に警鐘を鳴らす社会派の作品なのである。環境保護団体・グリーンピース・インターナショナルのお墨付きも、充分うなずける。
三部作の第一作目である本書の舞台は、海。地球の7割を占める海の現状が、ここでは明かされる。知識としては知っていたが、小説で読むと、死に瀕した地球の悲鳴が聞こえてくるようだ。なにより恐ろしいのは、海を蹂躙しているのが他ならぬ自分自身である、ということ。罪の意識がないだけに、余計タチが悪いのかもしれない。
この作品のおもしろいのは、一千年というスパンで未来と現在をリンクさせながら物語を展開していくところにある(たんに対比ではない)。未来の結果は、現在に原因がある。とすれば、未来を決める(もしくは、変える)のは、今―。そんな考え方が脈打っているのだ。
もう手遅れなのだろうか。それとも、まだ間に合うのだろうか。だとしても、ターニング・ポイントは刻一刻と近づいているにちがいない。[Amazon]
アメリカ:金原瑞人/西田登・翻訳
Firestorm (The Caretaker Trilogy)
David Klass




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