『囚われちゃったお姫さま』パトリシア・C・リーデ
- パトリシア・C.リーデ
- 東京創元社
- 2100円
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書評
とかくおとぎ話の「お姫さま」というものは、美人で、か弱くて、王子さまに救い出されるのを待っているような受身の存在として描かれている。ジェンダー論者でなくとも、そんなお姫さま像に抵抗を感じるのは私だけではないだろう。
さて、本書。
なにしろ、少女漫画風の可愛らしい表紙にタイトルが「お姫さま」である。しかも一緒にいるのは、ファンタジーにお馴染みのドラゴンじゃあないですか。夢見る乙女ならともかく、普通の大人なら手に取るのが気恥ずかしくなるような一冊である。「この手の作品はちょっと・・・」と1ページもめくらないうちから敬遠する人も少なくないだろう。
だが、先入観を取っ払って読み始めると、本書が既存の「お姫さま」ファンタジーと一線を画していることに気づくはず。むしろ、私のようにおとぎ話が苦手な人こそ、楽しめる作品だと思う。
主人公は、リンダーウォール王国の末の姫・シモリーン。
シモリーンが興味を持つのは、剣術、ラテン語、経済学、料理と、およそお姫さまらしからぬものばかり。あるとき顔だけが取り得の王子と婚約させられそうになり、あわてて城を脱出、ドラゴンの元に身を寄せることに。
「囚われちゃったお姫さま」というタイトルだが、厳密に言えば、「自ら志願して“囚われの姫”になったお姫さま」である。ドラゴンに囚われたお姫さまを騎士が救い出して一件落着、というパターンのおとぎ話を逆手にとって、「ドラゴンの元で幸せに暮らすお姫さまもいていいんじゃない?」とユーモアたっぷりに描いたのが、本書なのだ。
おとぎ話のセオリーを踏襲しつつ、少し視点をずらして別の価値観をひょいっと提示してみせるところがおもしろい。物語の世界に縛られた他の登場人物をよそに、シモリーンはじつに生き生きと縦横無尽に動き回る。いわば、彼女は自我をもった存在なのだ。
例えば、常識通り“囚われの姫”を救いに来た騎士に向かって「わたし、助けてなんてほしくないの」と追い返す。「そんなことできません!そんなの―」と諦めない騎士に、すかさずシモリーンは突っ込む。「『まちがってる』っていうんでしょ?わかってる」。
なんて具合。終始こんな感じで、まるっきりコントなのだ。なかでも、びんから出てきた精霊(ジン)との会話には笑った(是非、本書でご確認あれ)。
ストーリーはいたって単純なので物足りなく感じる部分もあるが、人間の心の闇を描くYAが主流を占める中、ここまで明るく軽いタッチで描いた作品は貴重だと思う。この作品が全米図書館評議会(ALA)のヤングアダルト部門の最優秀図書に選ばれたのは、そんなところも評価されたのかもしれない。
ともあれ、多彩なキャラや、軽妙な語り口(翻訳も読みやすい)など魅力たっぷりで、笑いの中にもふっと考えさせられる楽しい一冊である。[Amazon]
アメリカ:田中亜希子・翻訳
Dealing With Dragons (Enchanted Forest Chronicles, 1)
Patricia C. Wrede

※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

囚われちゃったお姫さま

ぐらさん、こんにちは。
ふふっ、「こういうジャンルは、ふうたんがひっかかるだろうなあ」って、
思ってませんでした?
ひっかかりましたよ!おもしろそう!!
ワタシもねぇ、昔はそりゃ~妄想しましたよ。
キーハンターの千葉真一(こりゃまた古いね~)や、
西部警察の舘ひろし(ご存知ですか?)なんかが、
悪者に囚われたワタシを救ってくれるのを。
でもね、結局は顔やカッコ良さで生活はできないって
知ってしまったときが、大人になった時なのかなあと思います。
さっそく、ブックマークです♪
ぐらさんのブログは、いつもチェックしていますのよっ。
王子さまと結ばれて「めでたしめでたし」となった後の方が、ものすごく大変なんですよね、じつは。
このファンタジー、いい具合に力の抜けたところが笑えますよ。
おとぎ話では“格好いい騎士”が、ここではただの間抜けになってたり。
綺麗な表紙とあらすじに惹かれて購入…がイマイチどころかイマサン。いまどきこの程度で型破りって…聞き分けのない姫とかハンサムだけど馬鹿な王子とかいつの時代だよってがっくり。今正統派のお姫様の方が珍しいよね、元気でタフで
ちょっぴり型破りってこんなんばっか。むこうの児童文学って遅れてるのね(クスって思った一冊でした。日本のコミックやYAになれてると平凡すぎますね退屈でした。あ、モノクロの挿絵はすばらしかったわ、それくらいかなぁ。
コメントありがとうございます。
わたしも、日本のYAの質は高いと思ってます。
最近の欧米ファンタジーが小粒なので余計。
たしかに、ストーリーは単純ですよね。
ただ主人公の人物造形、よくある〈型破り〉な姫とは似ているけど、少し違う気がします。
例えが悪いですが、あんみつ姫みたいなじゃじゃ馬で元気いっぱいの女の子ではなく、現実的でどこか冷めた目線を持っているお姫さまに思えました。
他の登場人物が浮ついている中、物語で重石のような存在になっているんじゃないでしょうか。
その意味で、とても新鮮な一冊でした。