『クロニクル千古の闇4 追放されしもの』ミシェル・ペイヴァー
6巻シリーズの第4巻。
前回、無理矢理〈魂食らい〉のしるしを胸に刻み付けられたトラク。それを必死で隠していたが、あるとき皆の知るところとなる。〈魂食らい〉は〈ハズシ〉となり、氏族から追放され見つけ次第殺される―。それが氏族の絶対の掟だった。
一人ぼっちとなったトラクに、死の恐怖や悪夢が容赦なく襲い掛かる。そこに〈魂食らい〉の暗躍、ウルフの献身、レンの秘密が絡み合い、物語は新たな段階へと動き始める。
シリーズ後半に突入した本書から、物語の質が微妙だが確実に変わったと思う。
もともと地味なファンタジーではあるが、〈魂食らい〉たちとの対決を前面に描いた前作より盛り上がりに欠け、さらにモノトーンの色合いが濃くなった。しかし、これほど「闇」をはっきりと意識させる巻もない。
ここでの「闇」は、多義的である。ネオンきらめく現代とは異なり、6000年前の昔は明かりとてなく、夜は真っ暗だったはずだ。ましてやトラクは氏族を追い出され、森の中でたった一人生きる身。たき火の明かりの届かない大部分は、闇に閉ざされた世界といっていい。今でも人が暗闇に不安を感じるのは、太古の記憶が刻まれているのだろうか。闇は心に侵食し、不安・恐怖・孤独・絶望を増幅させる。
身も心も衰弱していくトラクの姿は、環境と人は密接不可分の関係であり、体と心も相互に影響しあっていることを感じさせてくれる。本書は、トラクを取り巻く闇と、彼の内にある心の闇の両方に迫った一冊といえるだろう。
いうなれば第4巻は、試練と秘密の物語である。トラクが追いつめられ、レンは宿命の重圧に苦しみ、ウルフはある決断をする。展開はゆっくりしたものながら、次々と秘密が明かされるので目が離せない。
また、トラクは14歳となり、レンも月のものを迎え、お互い異性として意識し始めるなど、心身ともに成長した二人の内面の変化が描かれているのが特徴的。それぞれに事情を抱えて離れたり、求め合ったりしながら絆を強固なものとしていく様子に、思わず身を乗り出して読みふけってしまう。結局のところ、シリーズの核はトラクとレンとウルフなのだ。このファンタジーは、自然と一体になって生きる人々の暮らしぶりだけでなく、人と人、人と動物との関係にも光を当てて描いているのが魅力である。
さらに、作者が実地調査するなどして紡がれた、ディテールに富んだ描写を忘れてはならない。今回も、狩りや食事、道具作りの様子が、じつに生き生きと描かれている。
闇の力を手に入れようと目論む敵との戦い、主人公の成長、仲間との友情など、児童ファンタジーの王道を踏襲しつつ新鮮に感じるのは、このしっかりとした世界観にあると思う。[Amazon]
イギリス:さくまゆみこ・翻訳
Outcast (Chronicles of Ancient Darkness)
Michelle Paver




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