『カナリア王子』イタロ・カルヴィーノ

カナリア王子―イタリアのむかしばなし (福音館文庫)いま、福音館文庫がアツい!(と、私は勝手に思っている)
ディーノ・ブッツァーティの『シチリアを征服したクマ王国の物語』に続いて、またもやイタリア児童文学の再刊である。伝承文学好き、イタリア文学好きなら、絶対「買い」の一冊だ。
『シチリア~』ではブッツァーティの絵の才能に驚かされたが、こちらも負けてはいない。『旅の絵本』シリーズで有名な安野光雅さんによる挿絵である。こんな美しい本が700円も出せば読めるのだから、ありがたや。

イタリアを代表する作家・イタロ・カルヴィーノは、優れた文学作品を次々と世に送り出す一方、イタリア全土の民話をまとめ上げた業績で知られている。
既に岩波文庫から『イタリア民話集』として翻訳出版されているが、カルヴィーノが収集・再話した200篇の民話のうち、7篇を選りすぐって一冊にまとめたものが、本書。

それにしても、民話ってものすごくシュールだ。
表題作「カナリア王子」では、お姫さまは継母に疎んじられて城に軟禁させられてしまう。けれど父親の王は、「娘は楽しく暮らしておるかな」と思いだしたように尋ねるだけで、一度も会いに行くことはない。完全な育児放棄である。優しい口調なだけにいっそう不気味なものがある。
また、「サルの宮殿」の王は、双子の息子どちらに王位を譲ればよいのか迷ったあげく、こう宣言する。

二人で、それぞれ旅にでて、よめをさがすのだ。そして、わしに、みごとな、めずらしいおくりものをしてくれるよめを見つけてきたものに、王のかんむりをさずけよう

なんていい加減な。そんな基準で次のトップを決められた国民が哀れである。
「ナシといっしょに売られた子」は、もっとひどい。毎年四かごのナシを王さまに献上しなければならないのに、その年三かご半しか収穫できなかった男は、苦し紛れに自分の娘をかごに入れ、その上にナシの実と葉をかぶせて出荷するのだ。いったい娘の人生を何だと思っているのだろう。

と、いちいち突っ込んでしまうが、多少の毒を含ませながら強引に展開してゆく物語を、読み手にまるごと受け入れさせる力が昔話にはあると思う。カラリと明るい語り口がそうさせるのだろうか。それとも、これが長い間語り継がれてきた重みというものなのだろうか。
個人的には、物語を彩るアイテムの数々に魅了された。前からページをめくれば人が鳥になり、反対に後ろからめくると鳥が人になる魔法の本なんて、想像するだけでワクワクしてしまう。
魔女や魔法が、人とともに当たり前に存在する世界。機転とおおらかさとほんの少しの運で幸せをつかむ人たち。イタリア人の気質や文化を感じることのできる、不思議に満ちた一冊である。[Amazon]

イタリア:安藤美紀夫・翻訳

シチリアを征服したクマ王国の物語
ディーノ・ブッツァーティ
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  1. お久しぶりです。
    福音館文庫!
    ちょうど昨日、福音館のHPを見ながら、
    今週末は書店で福音館文庫から何冊か買ってこようと思っていたところです!
    あまりのタイミングの良さにビックリして思わず書き込み。
    他にも何かオススメがありましたら是非是非教えていただきたいと思います。

    • ぐら
    • 2008年 11月30日 9:29pm

    >ANDREさん
    お。波長が合いますね。
    やはりイチオシは、最近出たこの2冊でしょうか。
    岩波文庫の方がコストパフォーマンスは高いですが、
    こちらは挿絵を眺める楽しさがあります。
    考えてみれば、
    子どもの頃から福音館文庫にずっとお世話になっているような気が・・・。

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