『サンタ・エクスプレス―季節風*冬』重松清
重松清の描く歳時記・「季節風」シリーズも、この冬編で完結となった。
『ツバメ記念日』から、『僕たちのミシシッピリバー』、『少しだけ欠けた月』を経て、『サンタ・エクスプレス』へ。四季の中にある物語を感じたのか。それとも、物語を通して四季に触れたのか。
どうやら日本人ひとりひとりの記憶と季節は、思っている以上に密接に結びついているみたいだ。例えば音楽を聴くと当時の想い出がぐわぁっと蘇ってくるように、折々の風物詩は記憶のフックのような役割を果たしているのかもしれない。
本書には、石焼き芋、おせち、節分、バレンタインといった風物詩とともに、12の物語が描かれている。
冬の落語には泣かせる噺が多いが、寒さがこたえるこの季節、自然と人の温もりを心身ともに求めてしまうものなのだろうか。この『サンタ・エクスプレス』は、シゲマツ節がいやまして冴えわたっている。少々あざとさを感じる作品もあるとはいえ、すうっと心に沁み入るような読後感に、溶けてゆく雪を連想してしまった。
なかでも印象深かったのは、「じゅんちゃんの北斗七星」。
異質なものを排除するのではなく、個性として認める。そうすれば、この世界はもっと優しいものになるんだろうな。
重松作品は、読んでいてなんだか切ない。
それは、うまく伝えられない気持ちや言葉にできない感情が、そこここに散りばめられているからなのだと思う。現在進行形のことを描いているのに、いつか過去の出来事になってしまう予感を潜ませているからなのだと思う。
故郷で暮らす年老いた親を、遠く離れた地で心配する息子。モテない息子を必死で気づかう父親。別れを切り出す女。科学技術が進歩し、どれだけの時が過ぎようとも、家族愛、男女の情愛、友情といった、人が人を想う心は不変なのだろう。
そして季節は巡り、冬はやがて春となる。[Amazon]



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