『魔使いの戦い(上・下)』ジョゼフ・ディレイニー

魔使いの戦い(上下巻)

  • ジョゼフディレイニー
  • 東京創元社
  • 1995円

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書評

「魔使い」シリーズ第4巻の本書は、三つの集団に分かれていた魔女の一族が手を結び闇の力を増そうとしている、との不穏な噂から幕を開ける。
そんな折、農場で暮らすトムの兄・ジャック一家が何者かにさらわれ、母親がトムに残した三つのトランクも奪われてしまう。魔使い、トム、アリスは、魔女たちが跋扈するペンドルへと向かうことになるのだが…。

うーん、中だるみの印象。
ジャック一家の救出、魔女集団との対決、新たな世界の幕開け…。骨子だけ抜き取るといかにも手に汗握るファンタジーのようだが、実際これ以上のことが書かれているのか、と訊かれると言葉に窮する。シリーズ初の二分冊で「戦い」というタイトルに期待して読むと、いささか拍子抜けしてしまう巻である。

まず、ストーリーのテンポが悪い。
もとより魔法を駆使する物語ではないので地味なファンタジーではあるが、トムたちがペンドルに着いてから魔女たちと対決するまでが長くて飽きてくる。こんなにだらだら書く必要があるのだろうか。トムを翻弄する魔女・マブの登場やトムの母親の秘密(トランクの中身にはびっくりした)など、目を引くエピソードはいくつかあるものの、全体的に印象の薄い物語である。
それと関連して、キャラクターも弱い。物語の前半は魔使いとトムが別行動するため、魔使いの登場や師弟のかけ合いの場面は少ないし、善と悪の間で揺れるアリスのミステリアスな魅力も活かされていない。

前三作のレビューでも触れたが、単純に善悪で二分化しないところがこの作品の魅力だと思う。
勇気や他者への献身といったものを「善」なるものとして描いてきた作者が、他方の「悪」をどう捉えるのか注目していたのに、〈魔王〉って・・・(笑)。
このあまりに陳腐で稚拙な表現に、ガクッときてしまった。なんだったんだ、いままでの話は。
〈魔王〉なる存在がきちんと描けているならまだしも、ただ「闇の力」や「悪」といった言葉だけが独り歩きしている感がある。それを描いてこそ、登場人物たちの苦悩や葛藤、喜びや守るべきものが見えてくると思うのだが。
いろいろな意味で、次巻に期待が高まる巻であった。

イギリス:金原瑞人/田中 亜希子・翻訳

The Spook’s Battle (Wardstone Chronicles)
Joseph Delaney
The Spook's Battle (Wardstone Chronicles)

本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

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