『革命のライオン―小説フランス革命1』佐藤賢一
西洋歴史小説の雄・佐藤賢一が、満を持して手がける新作。全10巻(予定)という壮大な構想で描くフランス革命の幕開けである。
おお、ついに来たか。読む前から作者の気迫を感じられようというもの。社を挙げての刊行なのか、公式サイトも力が入っている。18世紀フランスの閉塞感、革命前夜の不穏な気配を描いたのが本書。
時代は、1788年11月末~1789年7月初め。
財政難に窮したフランス国王・ルイ16世は、新税法を成立させるため全国三部会の開催を決定する。意気揚揚と議会に臨んだ平民代表の第三身分議員たちを待ち受けていたのは、聖職者と貴族ら特権二身分の激しい抵抗。明らかな差別や遅遅として進展しない議会に業を煮やした第三身分議員たちは、自ら「国民議会」と名乗り、「球戯場の誓い」を経て結束を強めてゆく。
が、もとより政治改革まで手を出す気のなかった王は、民意の高まりに不安を覚え、国民議会の解散を要求、武力で圧力をかける。そんな状況に、ついに国民の怒りは頂点に達して…。
日本は市民が戦って権利を勝ち取った歴史がないから、民主主義に対する意識が薄い、とよく言われる。じゃあ、勝ち取った歴史とやらを見せてもらおうじゃないか、と読み始めた。
実行力に欠ける議員が多い中で異彩を放つのが、貴族でありながら第三身分議員に出馬したミラボー。その豪胆な性格と世事に明るい聡明さで立憲君主主義を推し進めてゆくキーパーソンである。
このミラボーという人物を、作者はじつに魅力たっぷりに描き出す。彼の存在感の前には、ロベスピエールすら脇役に思える。こわもてのイメージだったロベスピエールが、世間知らずの優男として登場したのは意外。そんな彼も怪人・ミラボーと接するうちに、正義実現のためには「汚れることを恐れまい」という政治信念を持つに至るのだが。
本書で興味深かったのが、ミラボーたちが言論戦で世論を動かしていくところである。はじめに言葉ありき。これは、いつの世にも通用する理なのかもしれない。
とはいえ、ミラボーがどんなに有能であっても、ひとりでは革命を成し遂げられなかっただろう。民衆の力と情熱が加わってはじめて、巨大な力たり得たのである。そこに、フランス革命を紐解くおもしろさがある。
その民衆の底力が発揮されるのが、第2巻。ひとつの事件が、どうやって国家の仕組みを根底から覆す革命へと発展していったのか。そのあたりがどう描かれているのか、楽しみだ。[Amazon]



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