『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々4 迷宮の戦い』リック・リオーダン

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々〈4〉迷宮の戦い愛国心が強い訳でも、アンチ・アメリカという訳でもないが、ハリウッドの終末モノ映画を見ると、きまって毒づいてしまう(じゃあ観なきゃいいのに)。なんでアメリカ人が人類代表で地球を危機から救っているんだ?え、なにか、アメリカは世界の中心とでも言いたいのか?etc…
そんな私でも、この作品のようにここまで堂々とアメリカナイズされるとかえって気持ちが良いものである。

ギリシャ神話の世界がそっくりそのまま現代のアメリカに移動した、という設定の物語。エンパイアステイトビルの600階に浮かぶオリンポス山、アロハシャツを着る神、マクドナルドのハッピーセットで死者を召喚する少年…。「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズ第四巻の本書も、ギリシャ神話をうまく活かしながら軽妙なファンタジーに仕上がっている。
今回の舞台は、地下。
15歳の誕生日を迎えたパーシーは、アメリカの地下に網の目のように広がり常に動き続けている迷宮ラビュリントスへと冒険の旅に出る。というのは、この迷宮の出入り口を使ってハーフ訓練所に侵入しようと企むタイタン族の軍勢を阻止しなければならないからだ。罠や怪物が待ち構える複雑な迷路を制覇する鍵は、迷宮の設計者・ダイダロス。アリアドネの糸玉や、イカロスの翼、行方知れずだった牧神パンなども登場して、物語は新たな局面を迎える。

少年の成長譚、仲間との絆や恋の芽生え、闇の王の復活とそれに立ち向かう主人公たち…。こうやって物語のモチーフだけ列挙してみると、ファンタジーってたいして変わり映えしないものなんじゃないか、と思う。
とはいえ、毎回ギリシャ神話を取り入れて物語を展開させてゆく手並みは見事。エンタメに徹した作品だが、本書は今までになくメッセージ性が強い。死を逃れようとする者、現実と向き合えない者、環境破壊で瀕死の状態にある自然。現代社会の抱える問題が、登場人物たちの姿や言葉に託して映し出されている。なかでも、アナベスが女神・ヘラにぴしゃりと言い返す場面がよかった。神々が君臨する世界を描いているようでいて、人間の可能性や一人ひとりの行動に光を当てた作品である。

このシリーズも次巻でいよいよ完結。
パーシーたちは強大な力を得たクロノスに勝てるのか?そしてかつての仲間・ルークを取り戻せるのか?不吉な予言はオリンポスの運命をどう左右するのか?パーシーの恋の行方や如何に?最終巻を楽しみに待つこととしよう(それまで内容を覚えていられるだろうか…)。[Amazon]

アメリカ:金原瑞人/小林みき・翻訳

Percy Jackson and the Olympians, Book Four: Battle of the Labyrinth
Rick Riordan
Percy Jackson and the Olympians, Book Four: Battle of the Labyrinth, The

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。