『イヌは匂いの夢を見る』外崎肇一
犬を飼っていると、クンクンと鼻を嗅ぐしぐさを頻繁に見かける。
よく、「犬の嗅覚は、人の○○倍もある(ちなみに、この○に入る数字は言う人によって開きがある)」なんて表現をされるが、本当のところはどうなのだろう。見たところ、人間よりは匂いに敏感そうだが、科学的にどこまで解明されているのか。長年の疑問を解消したくて、本書を紐解いた。
本書は、嗅覚研究の現状と課題を概略的に解説した一冊である。
著者は、嗅覚・味覚を専門に研究する生理学教授。テレビや新聞などで一般向けに解説もされているので、ご存知の方も多いのではないだろうか。
著者によれば、匂いは科学的にはあまり解明されていないのだという。基本となる匂いの確立や匂いの分類すら試行錯誤の最中であり、人によって匂いの好みが異なるのはなぜか、匂いの情報を正確に伝えるにはどうすればいいか、といったこともまだ突き止められていないのが現状なのだ。
全八章からなる本書は、「匂いについてはよく分かっていない」という、身もふたもない論旨の第一章から書き起こされる。
つづく第二章から第四章にかけて、犬の嗅覚を生理学的に調べた研究結果がレポートされている。ここを読み通すのに苦労した。何が辛いって、犬が手術される実験の様子が辛い。研究のためには仕方がないことなのだろうが、とりわけ犬好きには胸が痛むところである。
アメリカで出会った犬とのエピソードを綴った第五章を経て、俄然おもしろくなるのは第六章から。
ここでは、優れた嗅覚を持ったマリーンという匂い探知犬が登場。がんに匂いがある、というのは知っていたが、訓練された犬がここまで正確に嗅ぎ分けることができるとは驚いた。
ところで、犬の嗅覚研究はどんなことに役立つのだろうか。
まず、匂いというものの仕組みが分かる。さらに、(これが本書を読んで興味深かったところなのだが)犬の鋭い嗅覚を応用した匂いセンサーの開発に結びつく。
現在、麻薬・爆発物探知というのは、犬の鼻に頼らざるを得ない状況だ。維持するには多大な労力とコストがかかるし、数も足りない。それが将来的に機械に代われば犬を危険から回避できるし、広く皆が安全を享受できることになる。
これまで匂いの可能性について考えたこともなかったけれど、未開拓だが将来性のある研究分野に今後も注目していきたい。[Amazon]



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