『キリンとアイスクリーム』牧野夏子・文/D[di:]・絵

まさに一目惚れ。
なんですか、このセンスの良さは。久々に絵本に打ちのめされてしまった。
月刊誌「こどものとも 年少版」の10月号なのだが、むしろ大人が読んで楽しめる一冊だと思う。逆に、3,4歳の子どもがこれを読んでどう感じるのか、気になるところだ。
少年が公園のブランコにこしかけてアイスクリームを舐めていると、突如一頭のキリンが現れる。
どうして公園にキリンがいるのか?という疑問に対する説明は、ここでは一切ない。だが、このありえない状況をすんなり受け入れ、ずんずん読めてしまう。
まずもって、このキリンの登場の仕方が強烈である。かつてこんな風に描かれたキリンがあっただろうか。
じっと少年を見つめるキリン。恥ずかしげにまつげをふせるキリン。哀しいのか楽しいのか、なにを考えているのかよく分からないキリンの微妙な表情に、すうっと引き込まれていく。
たいてい子ども向けの作品というのは似たようなパターンをなぞるが、本書の場合、どういうオチになるのか、最後まで読めなくてドキドキした。
ストーリーのおもしろさだけでなく、緊密な文体やダイナミックな構図、文章の配置など、1ページ1ページがよく練られてあって、巧さの感じる一冊である。

いくつもの「?」を残しつつ幕を閉じる、少年とキリンの交流。
そもそも、これを「交流」と呼んでいいものなのか。ましてや、これはハッピー・エンドなのか。
なんともシュールな世界観である。『キャベツくん』を読んだとき以来の衝撃だ。どうも私は、訳の分からない変な話に心奪われてしまうみたいだ。
読み進めていくと、不潔なイメージのあるよだれが、天から垂れ下がる神々しい糸でもあるかのように思えてくるからおもしろい。
少年よりも、キリンよりも、アイスクリームよりも、他のなによりも、この絵本の中でひときわ存在感を放っているのは、キラキラと輝くよだれなのである。[Amazon]



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