『ミレニアム2 火と戯れる女(上・下)』スティーグ・ラーソン
- スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂、山田美明訳
- 早川書房
- 1700円
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書評/ミステリ・サスペンス
「ミレニアム」第二部は、人身売買および強制売春がテーマ。
スティーグ・ラーソンは根っからのジャーナリストなのだろう、人間性を踏みにじる暴力に真っ向から切り込んでいく筆致は、読んでいて痛快である。
謎解きのおもしろさや構成のうまさでいえば、少女失踪事件の真相に迫った第一作目「ドラゴン・タトゥーの女」に分があるが、ある意味本作の方がミステリアスといえる。謎めいた孤高のヒロイン、リスベットの過去が掘り起こされていくのだから。
義務教育すら修了していない被後見人。精神を病んだ暴力的傾向のある女。
リスベットほど、世間的な評価と実際の姿がかけ離れている人間も珍しい。「少女のような外見をした24歳の女性」という設定は、彼女の抱えるちぐはぐさを象徴しているのかもしれない。
素行に問題はあるものの知的水準はかなり高いと思われる彼女が、なぜ無能力者のレッテルを貼られているのか?本作で、ついにその疑問に対する答えが明らかになる。存在しているだけで強烈な個性だが、その出自もただ者じゃなかった。
スウェーデンに巣くう人身売買の闇に迫る過程で浮き彫りになるのは、たった一人で巨大な暴力と戦ってきたリスベットの孤独。彼女の過去を知ってようやく、非常識に思われた振る舞いの一つひとつが腑に落ちるのである。
リスベットのキャラクターはいかにもフィクション的であるが、人間のエゴ、人をモノか駒のように扱う思想、周囲の無関心や偏見といったものは、ここで扱われた人身売買の問題と根っこは同じなのではないか。だからこそ、何度打ちのめされても立ち上がっていくリスベットの強さに、ただただ圧倒されてしまうのである。
リスベットに焦点を当てているので個人的には満足の第二部なのだけれど、物語としてはちょっと冗長なのが難。リスベットの捜索で引っ張るのは、無理があるよなあ、いくらなんでも。刑事たちの駆け引きを小刻みに差し挟んだために、全体がぼやけてしまった印象を受ける。
ぼやけたといえば、今回はもうひとりの主人公・ミカエル君は控え目である。リスベットの後を追っかけている感じ。考えてみれば、ターミネーターばりのヒロインも異色なら、フェミニストの男性主人公もずいぶんと異色である。いまはモテる男性像も変わってきているのかも。[Amazon] [Amazon]
スウェーデン:ヘレンハルメ美穂/山田美明・翻訳
※本書は、本が好き!経由で献本していただきました。

ミレニアム2 火と戯れる女 (上下巻)

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