『洋梨形の男』ジョージ・R・R・マーティン

洋梨形の男 (奇想コレクション)ホラー系統の作品を集めた、日本オリジナル編集の中短篇集。6篇中4篇は、本邦初訳である。
と言われると、ものすごく得した気分になるのだけど、そもそもジョージ・R・R・マーティンの作品を読むの自体、初めてなんだった。

久しぶりに手に取った「奇想コレクション」シリーズ。評判がよい一冊なので読んでみたが、正直なところ、大絶賛するほどでもないように思う。
プロットといい、ストーリー展開といい、しっかり繰られたネタを見ているようでどれも楽しめるものの、二度三度読みたいと思わせる吸引力には欠ける。他者浸食系ホラーの表題作にしても、〈洋梨形の男〉の人物造形とオチにもうひとひねり欲しいところ。理性で抑え込んでいた欲求の存在に気づかされる、という意味では心底ぞっとする作品なのだが。
同じようなホラー系の短篇集でいえば、ジョー・ヒルの『20世紀の幽霊たち』の方が、完成度は高いと思う。

ただし、「成立しないヴァリエーション」は別格。これは、掛け値なしに素晴らしい。
ヴァリエーションに富んだチェスの局面と人生の岐路を重ね合わせた中篇。
チェスを指すのと同じように、人生は一瞬一瞬、選択の連続である。今日のランチを何にするか、といったことから進路、パートナー、生活設計に至るありとあらゆる問題を、人は選び取りながら生きている。だからこそ、考えても詮ない「if」を夢想せずにはいられない登場人物たちに同調し、話の行き着く先を固唾を呑んで見守ってしまうのだろう。
落ちぶれた中年男性の悲哀、時空を超えた復讐劇と、ぜんたいに鬱々としたトーンが漂うが、最後にすうっと爽快感が突き抜ける作品である。時間SFアイデアのおもしろさに加え、話の運び方が絶妙。
執着も度を超すとホラーになり、悲劇を生む。些末なことにこだわって、大事なものを見落とさないようにしなくっちゃあ。

ちなみに、自分の身に起きてほしくない順に作品を並べると、「思い出のメロディー」、「終業時間」、「モンキー療法」、「洋梨形の男」、「子供たちの肖像」、「成立しないヴァリエーション」となる。
深刻度でいえば「終業時間」なのだろうけど、あまりのバカバカしさに笑ってしまった。[Amazon]

アメリカ:中村融・編訳

  1. こんにちは、はじめまして

    奇想コレクションは、もう20冊ほど出てるんでしょうか、わたしもよく読みます。
    個人的なベストは、蒸気駆動の少年、どんがらがん、TAP、かな。洋梨形の男は、たしかに面白いのとそうでもないのとバラツイテましたね。ともかく、記事をたのしく読ませてもらいました。また、来させてもらいます。

    それから、事後連絡ですみません。リンクを付けさせていただきました。ブログの新参者ですが、よろしくお願いします。

    jacksbeans

    • コメント、ありがとうございます。
      こういうシリーズものって、創刊された時は「全巻読破するぞ!」と意気込むんですが、刊行ペースに自分の読書が追いつかなくなってだんだんトーンダウンしていくんですよね・・・。
      TAP、おもしろいんですか。これは読みたいと思ってたので、楽しみです。

      おそろしくまったり更新なブログですので、お暇な時にでも覗いてみてください。

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