『小太郎の左腕』和田竜
草食系男子のみならず、近頃では弁当男子、スイーツ男子、はたまたレギンス男子なんてのまでいるそうな。
ステレオタイプな“男らしさ”に捉われず、自分らしく生きるのは大いに結構。ただ、ちょっと軟弱過ぎやしないかい。ガツガツした男もどうかと思うけど、ザ・肉食系とでもいうべき戦国武将に惹かれる“歴女”の気持ちも分からないでもない。
そんな女性陣の不満を代弁…した訳じゃないだろうが、乱世に生きる男たちの葛藤を描いた男臭い小説が、本書。
時は1556年。境界を接して戸沢家と児玉家が敵対する、架空の地を舞台にしている。物語の核となるのは、立場も年齢も性格も異なるふたりの主人公。
ひとりは、林半衛門。“功名漁り”の異名を持つ戸沢家の猛将である。もうひとりは、11歳の小太郎。愚鈍に見える少年だが、左構えの種子島を持たせたら超一流の狙撃の腕を見せる。
生と死が隣合わせの戦国時代、華々しい武功のためなら命も惜しまず戦う武士たちがいた。卑怯・臆病と罵られることを極端に嫌い、強敵に出会えば素直に力を認め合う。半衛門はまさしく、サムライ・スピリットを体現した存在である。
命を賭して己の美学を貫く生き方は、現代からすれば理解しにくい部分も多々ある。が、合理性が求められ、死の実感が希薄になった今だからこそ、感情をむき出しにして振る舞う武将たちの姿は眩しく映る。空気を読むことに汲々としている現代人は、大事な魂をどこかで置き忘れてしまったのではないか。
もっとも、皆が人を殺し合う戦いに価値を見出していた訳ではない。そこで、小太郎という無垢な天才スナイパーが登場する。
非凡な能力を持ったがゆえに苦悩する少年。このキャラ設定は抜群におもしろいのに、半衛門に体現される戦国マインドを描くのに力み過ぎて小太郎の印象が薄くなってしまったのが惜しい。彼の抱える孤独を浮き彫りにすることで、戦いの美学とは対極にある戦乱の世のむなしさや残酷さを描けると思うのだが。
なんというか、作者は戦国武将たちの生き様を多分に理想化している節がある。今の時代に欠けているからこそ、余計求めてしまうものなのだろうか。
ただ、その思いが前面に出過ぎて、ちょっと暑苦しい作品ではある。飄々とした『のぼうの城』の方が味わい深かった。[Amazon]



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