『説きふせられて』ジェーン・オースティン
- 2010年 5月22日
男は思い出に浸り、女は未来を見つめる生きものだと思っていたが、かつての恋人を変わらず愛し続けるアンのような女性を見ると、どうやらそうでもないらしい。
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カテゴリー : イギリス文学
男は思い出に浸り、女は未来を見つめる生きものだと思っていたが、かつての恋人を変わらず愛し続けるアンのような女性を見ると、どうやらそうでもないらしい。
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「早く先を読みたい」とはやる思いと、終わりが近づく寂しさ。
そんなジレンマにもだえつつ、ページをめくっていった。「クロニクル千古の闇」シリーズもついに最終巻である。
最強の〈魂食らい〉イオストラとの対決を前に、森には不穏な空気が立ち込める。悪霊による病と異常気象。雪と氷で覆われた地表さながら、氏族たちの心も不安や恐怖で固く閉ざされてしまう。イオストラの邪悪な支配を阻止するため、一人旅立つトラクを待ち受けていたものとは…。
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ジェイン・オースティン6長篇の中で唯一文庫化されていなかった小説が、ついに(というかやっと)新訳で登場。
この『ノーサンガー・アビー』(ちなみにキネマ旬報社版は、「アビー」ではなく、「アベイ」)は、オースティン22、3歳頃に書かれた初期の作品である。紆余曲折を経て出版されたのは、執筆から20年近く経ってからのこと。
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どうやら男女の仲というものは、ジグソーパズルみたいにはいかないらしい。くっついたり、離れたり、ぴったりはまっていたはずが徐々に隙間が広がってきたり…。
当人どうしが「これぞ運命の人!」と信じていても、あっけなく破局してしまうものだし、周りがあれこれ世話を焼いたからといって上手くいくものでもない。性格や好みの前に、相性や巡り合わせといった、つかみどころのない要素がでん、と立ちはだかるのが恋愛の常である。
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6巻シリーズの第5巻。
このシリーズ、毎回冒頭にインパクトのある場面をもってきて、その勢いで一気に物語を展開していくのだが、今回はのっけから血の匂いと憎悪が立ち込める、不穏な幕開けである。思い切りがいいというか、トラク、レン、ウルフ以外のキャラクターにはずいぶん冷たいというか、このあたり、西洋人と東洋人の感覚の違いなのだろうか。
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オースティンの小説の何がおもしろいって、卓越した人間観察力と、皮肉の効いた(少しいじわるな)ユーモアにあると思う。
主人公を取り巻く、さまざまな人間模様。ごくありふれた、どこにでも転がっていそうな日常の出来事が、彼女の手にかかるとキラキラと輝き始めるから不思議だ。
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銀婚式の日に、妻とともにイギリス南西部の田園を訪れる48歳のアシャースト。
そこは、二人が初めて出会った懐かしい場所だった。途中立ち寄った村で、彼は若き日の初恋を思い出す。胸に去来するは、清純で可憐な村娘ミーガンの面影。花咲くリンゴの木の下で永遠の愛を誓いながらも、身分差を理由に彼女の元から逃げ去ったかつての自分。
甘い感傷で思い出に浸っていたアシャーストだったが、地元の老農夫から、彼の不誠実な行為の結末を知らされることになる・・・。(『林檎の木』改題)
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舞台は、イギリス北部ヨークシャー。
ヒースの茂る荒涼たる自然を背景に、〈嵐が丘〉と〈鶫の辻〉二つの家族の三代にわたって繰り広げられる愛憎劇を描いた物語である。
〈嵐が丘〉の主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンと惹かれ合うようになるが、現実的な彼女は〈鶫の辻〉のエドガーを選ぶ。キャサリンの兄ヒンドリーの数々の仕打ちに堪え忍んできたヒースクリフだったが、絶望に打ちひしがれて屋敷を去ることに。
数年後、金持ちになって戻ってきたヒースクリフ。彼の猛る復讐心は、それぞれの子どもたちの人生も巻き込みながら、怒涛の結末へとなだれ込んでゆく。
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書評
本書を読んで私の脳裏をよぎったのは、オーストリアから発信された衝撃のニュースである。
父親が娘を24年間にわたって自宅地下室に監禁。性的暴行を加えて、7人の子どもを産ませていた、という事件である。日本でも大きく取り上げられたので、ご記憶の方も多いことと思う。
犯人の顔写真や地下室の様子が公開、次々と事件の全貌が明らかになるにつれて、そのあまりの悲惨さに言葉を失った。なにより衝撃だったのは、近所の人が“鬼畜”と呼ぶにふさわしい男のことを、「こんなことをするとは思えない、まったく普通の人」と話していたことだ。
外から見ただけでは、決して窺い知ることのできないもの。そのひとつが、家庭であろう。傍目にはどんなに幸せな家庭に映っても、真実の姿は中に入ってみなければ分からない。一歩足を踏み入れるとそこには、底知れぬ闇が広がっているかもしれない。本書は、「家庭」という名の牢獄に囚われた人々の物語である。
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6巻シリーズの第4巻。
前回、無理矢理〈魂食らい〉のしるしを胸に刻み付けられたトラク。それを必死で隠していたが、あるとき皆の知るところとなる。〈魂食らい〉は〈ハズシ〉となり、氏族から追放され見つけ次第殺される―。それが氏族の絶対の掟だった。
一人ぼっちとなったトラクに、死の恐怖や悪夢が容赦なく襲い掛かる。そこに〈魂食らい〉の暗躍、ウルフの献身、レンの秘密が絡み合い、物語は新たな段階へと動き始める。
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舞台は、ギリシャ・クレタ島北方沖のスピナロンガ島。
ここは、1903年から約半世紀にわたりハンセン病患者のためのコロニーだった。つまり、他の人に感染しないよう強制的に患者を隔離(という名の排除)していたのだ。こんな非人道的なことが堂々と行われていたというから驚く。もっとも、日本も褒められたものではないが。
本書は史実を踏まえ、ギリシャにおけるハンセン病の歴史と、ある一族の歩みを巧みに織り合わせながら物語を紡いでいく。
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小説の限界と可能性を、同時に提示してみせたような作品である。イアン・マキューアンの作品を読むのは本作が初めてなのだが、傑作の名に恥じぬ小説。今度、彼の他の作品も手に取ってみよう。
主人公は、地方旧家の末娘・ブライオニー。
空想家の13歳の少女は、帰省する兄のために自作の劇を上演しようと張り切っていた。“役者”のいとこたちが思い通りに動いてくれないストレスの中、ある光景を目撃。少女ゆえの無知と空想と潔癖に突き動かされてブライオニーが作ったひとつの物語が、思いもよらぬ事件へと発展し、人々の運命を大きく変えることに。
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思えば子どもの頃、世界はもっと単純で分かりやすかった。できることは限られていたのに、なんでもできるような気がしていた。
いつだったろう、白でも黒でもない、グレーゾーンの存在を知ったのは。悲しいのに笑い、嬉しいのに切なくて泣きたくなる。そんな言葉にできない感情をもてあますようになったのは、いつからだったのだろう。
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この人が訳した作品なら・・・と、翻訳家で本を選ぶことがある。
とくにヤングアダルト文学では、代田亜香子とさくまゆみこ翻訳作品を好んで追いかけている。
「クロニクル千古の闇」シリーズで有名なさくまゆみこさんは、アフリカを舞台にした作品を多く紹介されている翻訳家。資源エネルギー問題が絡んでいることもあるが、近年、アフリカへの世界のまなざしが熱い。ただ、注目度の割にはアフリカの実態が伝わってこないのが現状だろう。
「アフリカ」とひとくくりにしがちだが、その中にはケニアがあり、ナイジェリアがあり、ガーナがあり、他にもたくさんの国々が存在する。そこで暮らす人々はどんな景色を眺め、なにを考え、どのような問題を抱えているのだろうか。小説は、アフリカを知るための、ひとつの入り口になってくれるのではないだろうか。
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『宝島』を知らない人っているんだろうか。
子どものための世界文学全集の中に必ずといっていいほど入っていた上に、「男の子におすすめの児童書」の筆頭に挙げられていた覚えがある。たくさんの翻訳が出されているのも、人気の高さを物語っているといえるだろう。
ただ、子どもの頃『宝島』で繰り広げられる冒険に胸躍らせた読者でも、この作品の小説としての素晴らしさを知っている人は、案外少ないのではないだろうか。かくいう私がそうだった。これまでの『宝島』が、児童文学として紹介されていたのに対し、大人の鑑賞に耐えうる作品として提示してみせたのが本書の新訳である。
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オースティンの『高慢と偏見』が少女マンガだとすれば、この『ジェイン・エア』はさしずめメロドラマといったところだろうか。
孤児になった少女は、引き取られた伯母の家で冷たい仕打ちを受け、寄宿学校に厄介払いされる。やがて成長し、家庭教師として赴いた屋敷の主人と恋に落ちるが、次々と苦難が襲い掛かってくる。
あらすじをみると、実に波乱万丈な物語である。このいかにも少女趣味的な内容が嫌でこれまで手が伸びなかった。実際読んでみると、ジェインとロチェスターとの甘い会話には辟易した。悲しいかな、恋人同士のじゃれ合いは、当人たちが真剣であるほど周囲は滑稽に感じるものなのだ。
少女時代なら胸躍らして読んだかもしれないが、ご都合主義的な展開や、二人が唐突に恋に落ちる不自然さ、ジェインほどロチェスターを魅力的に感じられないという温度差もあって、それほどおもしろいとは思えなかった。
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恥ずかしながら、今まで『ヴェニスの商人』を読んだことがなかった。借金の担保として肉一ポンドを要求したユダヤ人の金貸しが、逆に証文に書かれた文言によって一杯食わされる、というあまりにも有名な戯曲だ。
一休さんのとんちのようなそのくだりのイメージが強くて、意地の悪い金貸しを懲らしめる話なのだと勘違いしていた。そんな私が本書を紐解いてみようと思ったのは、最近『ヴェニスの商人』の映画を観たからである。
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児童ファンタジー本が、どんどん厚く、重くなっている。
あれは東野圭吾さんの短篇だっただろうか、売れる本を作るために出版社や作家が本の分量を競うようになり、最後は鉄板を仕込んで文字通り「重い」本に仕立てた、という笑えない物語があったが、最近の児童書をみると、小説の世界だけではない気がしてくる。ここまでくると、読書=筋トレ状態である。特に、このソニー・マガジンズの翻訳ファンタジーは一冊の分量が半端じゃない。児童書なのに、子どもに優しくない本である。
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ファンタジーで、「魔女」と「ドラゴン」を登場させるのは、諸刃の剣だと思う。強烈な個性があるぶん、うまく扱えないと、既にある作品の二番煎じ(ひどい場合は三番煎じ)になってしまう。
『ハリー・ポッター』の大ヒット以降、続々とファンタジーが出版されるようになったが、どれも似たり寄ったりか、それ以下の出来でしかない。「魔女」と「ドラゴン」なんて、もうインフレ状態。この二つのどちらかが出てきた時点で、げんなりしてしまう。
というわけで、二巻目が出たつい最近まで、『魔法使いの弟子』だと思い込んでいたばかりに、本書を手に取るのがずいぶん遅くなってしまった。惜しいことをした。一見よくある「魔法モノ」を装っているようだが、中身は違う。これは、魔女が登場するファンタジーの中では、久しぶりに良質のものではないだろうか。
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本文一ページ目から、一歩も動けなくなってしまった。
なんとか気を取り直して先へ進んだものの、いくつもの「?」に阻まれ、読み通すのにかなり時間がかかってしまった、あなどれない一冊である。
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旧約聖書を読んだことがなくても、「ノアの箱舟」はほとんどの人が知っているのではないだろうか。
人間の悪行を見かねた神は、いっさいの生き物を地上から消してしまうことを決意し、ノアにすべての動物のつがいを箱舟に連れて入ることを指示する。その後、大洪水が襲いかかり、40日降り続いた大雨で地上の生き物は皆、滅びる。箱舟に乗ったノア一行だけが生き残り、新たな世界を創り始める、という物語だ。
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主人公の少年・デイヴィが住んでいる町に、一人の少年が越してきた。スティーヴンと名乗るその少年は、父親が死に母親も病気で入院したため、遠縁の叔母の家に身を寄せることになったのだ。デイヴィは、気味の悪いスティーヴンに誘われるまま、粘土で作った人形に命を与える儀式を手伝うことになる。そして、その人形が動き出して・・・。
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川の向こう側の林の間から、とつぜんオーロックス(ウシの原種。絶滅して今はいない)があらわれた。
冒頭の一文を読むと、そこには6000年前のヨーロッパ世界が目の前に広がっている。本を開けば、21世紀の日本にいながらにして、やすやすと物語の世界へとトリップすることができるのだ。
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『チョコレート工場の秘密』に代表される児童文学で有名なダールだが、彼の魅力はなんといっても大人向けの短編にあると思う。ブラックユーモアたっぷりで、最後にあっと言わせるキレのよい作品は、短編を読む醍醐味を存分に味わうことができる。
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『ハリー・ポッター』が大ベストセラーになってから、出版社は「ファンタジーものは売れる」と踏んだのか、次々とファンタジー本が世に送り出され、今や専用の棚が備え付けられた書店も少なくない。
ただ、魔法、ドラゴン、妖精といったものが溢れすぎて少々食傷気味の感は否めない。
本書は、私のように「ファンタジーはもういいや」と思っている人こそ楽しめる作品である。
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海外文学を読むにあたり、悩むことが二つある。
ひとつは、何を読むか、ということ。もうひとつは、どの訳で読むか、ということ。特に、有名な作品ほど、複数の出版社から翻訳本が出されているので、どれを読むか、いつも迷ってしまう。訳で、原書の雰囲気の伝わり方や、読みやすさが違ってくるから、余計に悩む。
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サマセット・モームが、「娯楽小説」と評しているように、古典だからと肩肘張らず楽しめる作品である。少女漫画のような内容なので、若い読者の方が、共感できるのではないだろうか。
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なんて美しく、優しい物語なのだろう。
デイヴィッド・アーモンドの作品を読むと、「児童書」と「一般文芸書」に分けることが無意味に思えてしまう。『肩胛骨は翼のなごり』は、彼が子ども向けの本として書いたものだそうだが、あらゆる年代の人が読んでも深い感動を呼び起こす作品である。
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乱読・積読・併読の本の虫による書評。 海外文学、歴史、YAなど。
Author’s Name:ぐら
長年愛読していた日経新聞に嫌気がさしたので、おもいきって他紙に変えてみた。にしても、ワイドショーと大差ない政治面はどうにかならんものかねぇ。。。(9.1)