カテゴリー : ドイツ文学

『朗読者』ベルンハルト・シュリンク

朗読者 (新潮文庫)ヘルガ・シュナイダーの『黙って行かせて』を読んで、久しぶりに本棚から引っ張り出してきた。
どちらも、過去の罪と向き合うことや相手の心を理解することの難しさをテーマにしたドイツ文学である。一方は、母と子の再会を通して。他方は、親子ほどに年の離れた男女の恋愛を通して。
続きを読む

『黙って行かせて』ヘルガ・シュナイダー

黙って行かせて過去に犯した罪をどのように裁き、どう受け入れるのか。
戦後のドイツ人は、ナチズムという負の遺産を前に、徹底した自己批判とその反動とのはざまで苦しんできたといえる。
執拗に、繰り返し語り継がなければ記憶は風化する、あっけなく。その意味では、真に“戦争”が終わることはないのかもしれない。そんな終わらない戦争を、母と子の確執を通して描き出したのが、本書である。
続きを読む

『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』ウーヴェ・ティム

カレーソーセージをめぐるレーナの物語 (Modern & Classic)きっかけは、ほんの偶然。
第二次大戦下のドイツ、男女の出会いと別れのドラマから、ある食べものが生まれた。カレーソーセージ。輪切りにしたソーセージを、カレー粉とケチャップを混ぜ合わせたソースに絡めて炒めた、ドイツの庶民的な食べものである。
一見相容れない「カレー」と「ソーセージ」がどのようにして結びつき、広く親しまれるようになったのか?その誕生の謎に迫る時、戦中戦後の混乱をたくましく生き抜いたひとりの女性の人生が浮かび上がってくる。
続きを読む

『ノック人とツルの森』アクセル・ブラウンズ

ノック人とツルの森 (Modern&Classic)触れようとするのにするりとかわされ伸ばした手は空を切り、よく見ようとするのに靄がかかってぼんやりとしか映らない。そうしてただ、もどかしさばかりが募ってゆく。
本書を読んで、そんなことを感じた。そしてそれは、アディーナという少女が母のカーラに抱く思いそのものなのである。
続きを読む

『魔法の文字』コルネーリア・フンケ

魔法の文字本書は、『魔法の声』の続編となる。
フンケが『魔法の声』を書いた時は、三部作にするつもりはなかったという。事実、『魔法の声』一冊で物語は完結している。しかし、第二作目となる本書を読むと、前作は序章に過ぎなかったと思えてくる。物語に深みと奥行きがあるぶん、本書の方が楽しめた。
前作のレビューで私は、終始こちら側の世界で物語が展開するところに限界がある、と書いたが、そんな批判を予想していたかのように、今回は「闇の心」の物語の世界が舞台となっている。
続きを読む

Page 1 of 212