『素数たちの孤独』パオロ・ジョルダーノ
- 2009年 8月17日
マイナスとマイナスを足しても、プラスになることはない。その数値が大きくなればなるほど、ますます正数からの距離は広がっていく。
だが、孤独と孤独が出会うとき、共感が生まれ、癒しとなる。それは、ひとりで歩む人生の流れの中で、奇跡のような瞬間だ。
続きを読む
カテゴリー : イタリア文学
マイナスとマイナスを足しても、プラスになることはない。その数値が大きくなればなるほど、ますます正数からの距離は広がっていく。
だが、孤独と孤独が出会うとき、共感が生まれ、癒しとなる。それは、ひとりで歩む人生の流れの中で、奇跡のような瞬間だ。
続きを読む
同時代にイタリアで生まれ、ファシズムの嵐をくぐり抜けてきた女性作家。
歩みこそ似通っているものの、題材も作風もまるで異なる収録作品である。
他人と交わらず、島で空想の世界に浸る繊細な少年を描いたエルサ・モランテの「アルトゥーロの島」と、逡巡しながら生きる大人たちの姿を書簡形式で浮かび上がらせたナタリア・ギンズブルグの「モンテ・フェルモの丘の家」。
過去を回想する少年の独白で綴られた前者が、感傷的で神話めいた色合いを帯びているのに対し、後者は登場人物が多い上にそれぞれの人間が遠慮なく声(ここでは手紙だが)をあげているからか、にぎやかでぐっと世俗的である。
続きを読む
いま、福音館文庫がアツい!(と、私は勝手に思っている)
ディーノ・ブッツァーティの『シチリアを征服したクマ王国の物語』に続いて、またもやイタリア児童文学の再刊である。伝承文学好き、イタリア文学好きなら、絶対「買い」の一冊だ。
『シチリア~』ではブッツァーティの絵の才能に驚かされたが、こちらも負けてはいない。『旅の絵本』シリーズで有名な安野光雅さんによる挿絵である。こんな美しい本が700円も出せば読めるのだから、ありがたや。
続きを読む
長靴の爪先にある三角形の島・シチリア。
古くはローマ市民を震え上がらせたハンニバルで有名だが、本書はイタリア統一に揺れる時代を描いた物語だ。今でこそ「イタリア」と呼んでいるが、この頃はまだ7カ国の集合体に過ぎず、統一国家が誕生したのは1861年になってから。シチリアは、両シチリア王国が治める独立国家だった。
・・・と、私のように昔習った世界史の記憶を必死でたぐり寄せなくとも、巻末の解説を参照すればこと足りる(後で気づいた)。この作品では歴史は背景に過ぎず、物語の中心となるのは名門貴族サリーナ家の当主・ドン・ファブリーツィオ公爵である。彼の目から見たシチリアや人々、胸に去来する思いが情感たっぷりに描かれた作品なのだ。半世紀にわたる一族の興亡は、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』を彷彿とさせる。
続きを読む
クマの物語である。
ただのクマではない。シチリアを征服した偉大なクマなのである。
人間に囚われた我が子を救い出すため、そして飢えと寒さから逃れるため、仲間を引き連れ山を下りることを決意したクマの王・レオンツィオ。暴君・シチリア大公率いる軍隊や、人食い鬼、化け猫など、立ちはだかる敵を次々と倒し、ついには一大王国を築き上げる。これは、クマ王国の誕生から終焉に至るまでを描いた物語である。
続きを読む
「本の虫」を自称していながら、自分がまだ何も読んでいない「ひよっこ」だと感じるのは、こんな作品に出合った時である。
イタリアの作家自体、片手で数えるほどしか知らない。ディーノ・ブッツァーティなんて聞いたこともない。だが紹介文によれば、「魔術的幻想文学の書き手として世界的に名高い」のだという。ただその「世界」に、私が入っていなかっただけなのだろう。
ともあれ、私にとっては初めて読む作家だったのだが、とても良かった。世界には凄い作家がいるものだ。プロットの巧みさ、切れ味鋭い筆致など、短篇のおもしろさを存分に味わうことのできる一冊である。
続きを読む
なんてきれいな物語なのだろう。
まるで詩のような、美しい世界。まさにこれは、一篇の詩である。光と闇の両面が、端正な文章で描かれ、読者に一幅の名画を見せてくれる。
続きを読む
乱読・積読・併読の本の虫による書評。 海外文学、歴史、YAなど。
Author’s Name:ぐら
長年愛読していた日経新聞に嫌気がさしたので、おもいきって他紙に変えてみた。にしても、ワイドショーと大差ない政治面はどうにかならんものかねぇ。。。(9.1)