カテゴリー : カ行の作家

『哄う合戦屋』北沢秋

哄う合戦屋

  • 北沢秋
  • 双葉社
  • 1470円

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書評


合戦の度に、単騎でいくさをしているような功名を重ねていながら、烏の群れに紛れ込んだ鵜のように一徹はいつも一人きりだ(P.133)

し、渋い。渋すぎる…。
内容はいたって地味なので、志村貴子のカバー絵と杏の帯文という強力なプッシュがなければ、歴史・時代小説コーナーの奥でひっそりと眠っていそうな一冊である。戦略というものを題材にした作品だが、出版社および書店サイドの売り込みのうまさにあっぱれ。
とはいえ、中身はけっしてお粗末なものではない。むしろ、想像以上におもしろかったのでちょっと吃驚してしまった。人材活用自己実現についてしみじみと考えさせられる戦国小説である。
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『望郷の道(上・下)』北方謙三

望郷の道〈上〉望郷の道〈下〉待っていた、なんてものじゃない。むしろ、遅かったじゃないか、という思いの方が強い。
本作は、日本経済新聞朝刊に約一年にわたって連載されていたものである。
新聞小説なんて暇つぶしにざっと目を通す程度だったのに(作家の皆さま、ごめんなさい)、これにはハマった。こんなに夢中になって小説を読んだのは、いつ以来だろう。最初はなんとなく続きが気になり読んでいたのが、やがて記事をそこそこに切りあげるようになり、一面の前にまず文化面、となるまでさほど時間はかからなかった。
朝が苦手な私が爽快なスタートを切れたのは、ひとえにこの小説のおかげだ。二分冊のボリュームが意外なほど、まったく長さを感じさせないおもしろさである。
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『汐のなごり』北重人

汐のなごり6つの物語からなる時代小説集。
北重人の作品を読むのは初めてなので、ひとつひとつの手触りを確かめるように読み進めていった。
舞台は、北前船が着く北の湊町・水潟(みなかた)。米どころの産地として知られ、冬は厚い雪で覆われる北国である。そこで暮らす庶民や武士たちの悲喜こもごもを静かに綴った一冊。

東北地方にある架空の酒出藩、とくれば、自然とかの有名な海坂藩が頭をよぎる。気になって著者略歴を見てみると、山形県出身とのこと。ちなみに水潟のモデルは、出身地の酒田市。これはもう、どうしたって藤沢周平と比べてしまう。
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『風花』川上弘美

風花ある日、匿名の電話がかかってきて、こう告げられる。
お宅の旦那さん、浮気してますよ。相手の女性は会社の同僚で、関係は三年ほど続いてるんですよ。
ドラマなら、ここから修羅場が始まるのだろう。が、結婚して7年になる主婦〈のゆり〉の場合は、少し違う。彼女はその事実を知っても、夫を責めることも、浮気相手に怒鳴り込んで行くこともしない。どうすればよいのか決められないまま、半年間ただ傍観するのだ。
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『何も持たず存在するということ』角田光代

何も持たず存在するということ角田光代さんの最新エッセイ集。
小説と違ってエッセイの場合、「さん」づけで呼ぶほうがしっくりくる。エッセイと一口に言っても、文章の美しさに惚れ惚れするもの、思わず笑ってしまうもの、視点の鋭さに唸ってしまうものなどさまざまあるが、角田さんのそれは、とても近しい感じがするのである。
小説を書いたことなどなく、一人旅をするわけでもなく、ましてや同世代でもない。共通点を探す方が難しいというのに、不思議と彼女の文章には共感できる。同じ目線の高さが、心地良い。
彼女のエッセイはほんとうに庶民的で、ものごとの捉え方も書く文章もごく普通である。ただ、「普通でいる」ということは、案外難しいのではないだろうか。
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