『おそろし』宮部みゆき
- 2008年 12月8日
カテゴリー : マ行の作家
歴史というのは、「勝者」の歴史であるとともに、「男」の歴史でもあると思う。良くも悪くも名を残すのは男で、女が表舞台に登場することは稀だ。
では、女は男が勢力を拡大するための都合の良い道具だったのか。ただ流れに身を任せるだけの、か弱い存在に過ぎなかったのか。
そうではなく、男が戦場で武勲をあげるのと同じように、女も己のフィールドで誇りを持って戦っていたのだ、と描いたのが本書である。
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最終回まで残すところわずかとなった「篤姫」だが、大河ドラマの主人公に、と私がひそかに熱望している人物がいる。その人とは、尾張藩第7代藩主・徳川宗春。
時の将軍・吉宗の緊縮財政に真っ向から異議を唱え、規制緩和によって名古屋を繁栄させた人物である。たしか、「八代将軍吉宗」の時に登場していた覚えがあるが、業績や人物としての魅力の割には知名度が低いように思うので、ここは主役で是非!
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直木賞を受賞して確固たる地位を築いた森絵都だが、やはりヤングアダルト作品を書かせたらうまい。『カラフル』で感動した読者なら、「待ってました!」と叫びたくなるような一冊である。
本書は、『カラフル』と『DIVE!!』の合わせ技のような作品で、ゴースト風味のスポ根物語といったところ。悩みも苦しみもない死者の世界を描きつつも、軸足は汚濁に満ちた現実世界にある。ファンタジックな設定ではあるが、中身はマラソン仲間との交流を通して人生に前向きになっていく主人公を描いた、至極まっとうな物語なのである。
近年、スポーツを題材にしたYAが豊作である。なかでも、佐藤多佳子『一瞬の風になれ』や、三浦しをん『風が強く吹いている』といった、陸上に青春をかける若者を描いた作品が熱い。『ラン』もその系統に列なるものといえるだろう。ただし、一風変わったスポーツ小説ではあるが。
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タイトルに引かれて、読んでみた。
二人の幼い神のいたずらで次々と不幸に見舞われる男が、明るく立ち向かっていく物語。
会社をクビになる、円形脱毛症になる、振り込め詐欺にあう、家が焼ける・・・。一日のうち、ほぼ一時間間隔で悪い出来事が起こるという悲惨さ。ところが男はそんなピンチを笑いに変えて、前向きに生きていく。
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犬が好きだ。姿を見かけると、心拍数が上がってしまう。
心ゆくまで犬と触れ合いたい、と願う犬好きは多い。しかし、本書の主人公は思うだけに留まらず、自分が犬そのものになってしまうのである。
初めて松浦理英子の作品を読んだが、いっぷう変わった小説だ。比喩や隠喩を用いて読者を煙に巻く小説に対して、真っ向勝負を挑んでいるかのようである。
『ファウスト』をモチーフにした魂の契約のくだりから、通俗的な家族問題に至るまで、捉えようによってはさまざまに表情を変える作品であるが、私は至極まっとうな恋愛小説と思って読んだ。
ただ、「恋愛」と言い切ると、この作品を狭めてしまうことになりかねない。ここで描かれるのは、広く関係や情愛といったものである。
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『錦繍』は、傑作だと思う。
いくつか気に入らない表現はあるものの(「ちょうど相撲に譬えると…」(P.124)のくだりや、育ちの良い女性が「浪花女のド根性」という言葉を使うことの違和感など)、それでもやはり素晴らしい小説である。
あらすじや、男女の往復書簡で綴られていく小説形式ついては、巻末の解説や他のレビューサイトに詳しいので、そちらに譲ることにする。ここでは、宮本輝さんがこの作品で用いている「生命」という言葉の意味について考えてみたい。
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1994年、内戦続くカンボジアの空港に、一人の日本人男性が降り立つ。
31歳で株ディーラーを引退した男は、生涯のライバル・賀来修一の生死を確認するために、この地に足を踏み入れたのだった。
本書の中で、男は「ぼく」としか書かれていない。周りの人間の名前は明らかにされているのに、だ。けれど、主人公の名前を知ることは、あまり問題ではないのだろう。語り手の「ぼく」は、大海原の中で頼りなげに浮かぶちっぽけな小船のような存在に思える。
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夏といえば、花火、海水浴、かき氷。そして、甲子園。
じりじりと肌を焼きつけるような炎天下、グランドにいるだけで凄いと思う。日焼けとは無縁の、バレーボールで汗を流していた私からすれば、アルプススタンドにいる人たちの忍耐力にも、頭が下がる。
野球には、選手だけでなく、観ている人も夢中にさせる何かがあるのだろうか。スポーツに打ち込む青少年を描いた作品には爽やかで熱い物語が多いが、その中でもとりわけ熱い「野球」小説を読むにつけ、そんなことを思う。
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「左右の脚を、交互にまえに出せ!」「そうすりゃあ、いつかはゴールに着く。以上!」(P.219)
これは、箱根駅伝予選会を目前に控え、監督兼大家が選手たちに言い放つセリフだ。なんの参考にもならない発言に皆がずっこける場面なのだが、考えてみればなかなか深い言葉である。
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現在放送中のNHK大河ドラマでは、武田信玄の軍師・山本勘助を中心に、戦国の世を駆け抜けた人間たちの生き様が描かれている。
血で血を洗う残虐な面があるとはいえ、食うか食われるかの弱肉強食の世界で、己の知力の限りを尽くして生き抜こうとするエネルギーには、今なお私たちを引きつけてやまない魅力がある。
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商売をやりたい子が行く商業高校。
技術を身につけて、工場で物を作りたい子が行く工業高校。
農家の子や農業をやりたい子が行く農業高校。
船に乗って漁をやりたい子が行く水産高校。
では、水商売の道に進みたい子が行く水商業高校があってもいいのではないか。そんな発想で誕生した、「都立水商業高校」。そこでは、「ホステス科」、「マネージャー科」、「バーテン科」、「ホスト科」、「ゲイバー科」、「ソープ科」、「ヘルス科」といった専攻科目があり、その道のプロを養成するのだ。
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ある人が、自らの命を絶ったとする。
残された人間は、訃報に驚き、嘆き、悲しむ。そして、彼(彼女)はどうして自殺したのだろう、とか、一体何を悩んでいたのだろう、とか、なぜひと言相談してくれなかったのだろう、とか、どうしてもう少し頑張れなかったのだろう、と、死んでしまった人間の心の内を、必死に推量しようと試みる。答えの返ってこない、空虚な問いと知りながら。
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本好きは常に、何か面白い本がないか、アンテナを張り巡らせているものだ。
新刊情報のチェックを怠らず、新聞の書評欄を丹念に読み、書店へまめに足を運んで棚を物色する姿は、さながら血に飢えたドラキュラのようだ。
けれど、そんな涙ぐましい努力(?)は、心を震わせる素晴らしい一冊に巡り会える喜びに比べれば小さなもの。その一冊に出会えるならば、どれだけの時間と手間と金をつぎ込んでも惜しくない、と思わせるほどの力が本にはあるのだから。
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死というものは、生のひとつの形なのだ。この宇宙に死はひとつもない。
きのう死んだ祖母も、道ばたのふたつに割れた石ころも、海岸で朽ちている流木も、砂漠の砂つぶも、落ち葉も、畑の土も、おととし日盛りの公園で拾ってなぜかいまも窓辺に置いたままの干からびた蝉の死骸も、その在り様を言葉にすれば「死」というしかないだけなのだ。それらはことごとく「生」がその現われ方を変えたにすぎない。
本書の主題は、冒頭の数行に示されている。
宮本輝は、自身の信仰を強く作品に打ち出して、帰納法ではなく演繹法で小説を書く作家だと思う。
まず結論をもってくる。そして、それを理論づけるようにエピソードをひとつひとつ描いていくのだ。だから、長い物語の旅を終えて再び始まりの場所に戻ったとき、作者がこの作品で描いていた世界が、心の底から理解できるのである。
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今、日本は病んでいる。
いじめ、自殺、虐待、殺人、汚職・・・。痛ましく憤りを抑えることのできない事件が連日のように報道され、新聞を見るのが嫌になるくらい、暗いニュースばかりが紙面を埋める。
「何かがおかしい」という漠然とした不安。けれど、その「何か」をうまく言葉にすることができない。それが余計にもどかしく、イライラさせる。
この、形も名前もない「何か」を掬い取り、言葉を補うことで、なんとかその正体を探ろうと試みたのが、本書である。
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乱読・積読・併読の本の虫による書評。 海外文学、歴史、YAなど。
Author’s Name:ぐら
長年愛読していた日経新聞に嫌気がさしたので、おもいきって他紙に変えてみた。にしても、ワイドショーと大差ない政治面はどうにかならんものかねぇ。。。(9.1)